2013年5月13日更新

【軌道エレベータ(宇宙エレベータ)の紹介】


1 軌道エレベータとは
2 軌道エレベータの作り方
3 軌道エレベータ建造の難点
4 あとがき
5 参考文献
6 読売新聞記事


1 軌道エレベータとは

 軌道エレベータとは,本来は地表から静止軌道(「ひまわり」などの静止衛星が地球を24時間周期で回っている軌道,地表から約3万6000 kmの高さ)の先まで伸びているチューブとその中(もしくは外)を昇降するエレベータのことを指すはずです.しかし,この乗り物というか建築物の興味深く本質的な部分はチューブにあるので,チューブを指して軌道エレベータと呼ぶことが多いように思われます.また,その機能から宇宙エレベータとも呼ばれています.
 軌道エレベータは大量の人や物を,安全に,低コストで,無公害に輸送できるロケットに代わるべきシステムです.基本的にはただ一つの技術的問題を除き,軌道エレベータは現在の科学技術で実現可能だと考えられています.とはいえ,軌道エレベータのことを初めて聞いた人には,なぜ4万km以上の長さのチューブを空中に保持することができるのかなど不思議な点があるかと思います.そこで,軌道エレベータの作り方の原理を以下に示します.


2 軌道エレベータの作り方

 軌道エレベータは一種の静止衛星です.静止衛星とは24時間で地球を一周する赤道上空の軌道に乗っているために,地上から見ると空の一点に静止して見える人工衛星のことです.そこで先ず,静止衛星についてごく簡単に説明します.
 円運動をしている衛星の立場に立ってみると,次式で表される遠心力,fcを受けているとみなすことができます.


m:物体の質量
r:円の半径
ω:衛星の角速度,静止衛星では2π/(24 hour) = 7.272×10-5 s-1

 また,衛星と地球の間には万有引力,fgが働きます.簡単のために,地球の質量が地球の重心に集中していると仮定すると,静止衛星と地球の間の万有引力は次式で表されます.


G:万有引力定数 6.672×10-11 N・m2・kg-2

M:地球の質量 5.97×1024 kg
r:地球の重心と衛星の距離

fcの大きさがfgに等しいので,衛星は宙に浮かんでいると考えることができます.したがって,fc = fgとおいてこれを未知数,rについて解くと,



となります.この式から静止軌道の半径はr = 4.22×107 m = 4万2200 kmと求まります.ちなみに,地球の赤道半径は約6378 kmですから,静止軌道は地表から約3万6000kmの上空にあるということになります.



2.2 軌道ストリング

 次に静止衛星の重心を静止軌道上に保ったまま,静止軌道から上下にひもを伸ばしていくことを考えます.簡単のために剛体(力を加えても変形しない架空の物体)のひもを考えてその重心が静止軌道にあるとします.ひもを上下にどんどん伸ばしていけば,下端はやがて地表に達するでしょう.ひもが横向きになってしまう心配はありません.なぜなら,ひもの静止軌道より低い側にある部分は重力によって引っ張られ,高い側にある部分は遠心力によって引っ張られるからです.このように有限の大きさの物体が衛星軌道上にあるときに,軌道から上下にはみ出した部分が引っ張り合う力が生じます.これを潮汐(ちょうせき)力といいます.地球の月に面した側の海水が月に引っ張られ海面が上昇し,同時に地球の反対側の海面も高くなるのも同じ理屈です.(「衛星は月の方なのになんで?」と,思うかもしれませんが,万有引力は地球にも働いているのでこのようなことになります.)
 さて,ひもの話に戻りましょう.この静止軌道上にあるひもを軌道ストリングと呼ぶことにします.軌道ストリングの下端を地表まで伸ばしたときに,バランスを取るためには反対側はどこまで伸ばす必要があるかを計算してみましょう.そのためには,軌道ストリングのごく短い微小区間(長さ,dr)に働く重力と遠心力の和を計算します.軌道ストリングの断面積をS,密度をρとして重力の向きを下向き(負)にとると,



となります.軌道ストリング全体にかかる重力と遠心力は釣り合っているので,fc - fgをひもの下端,rsから上端,reまで積分すれば0になるはずです. 係数,sρを無視すると,



となります.この積分を実行して,未知数,reについて解けば,re = 1.42×108 m = 14万2000 kmという数値が得られます.ちなみにこの数値は月と地球の平均距離,38万4000 kmの1/3強という非常に長い距離です.



2.3 軌道エレベータ

 さて,いよいよ本題です.ここまで辛抱して読んでくださった方はもうおわかりでしょうが,軌道エレベータが空中に浮かぶ原理は軌道ストリングの説明そのものです.「ひも」を束ねて「チューブ」にすればそれで軌道エレベータができあがります.

2.3.1 長さ

 軌道エレベータの長さは14万2000 kmにする必要はありません.下端は地表に届いているのが便利ですが,上端が月までの軌道の1/3まで伸びている必要はないかもしれません.その場合は例えば静止軌道の少し先に小惑星などのおもりをつけて,全体の重心が静止軌道に来るように調節してやればよいのです.

2.3.2 利点

 軌道エレベータが推進式エンジンを搭載したロケットなどに比べて優れた輸送機関であるということは,エネルギーの保存則を考えるとわかります.ロケットは,水素などの燃料を酸素などの酸化剤と反応させた時に発生する高温高圧のガスを吹き出し,その反作用で地球の重力に抗して軌道へと上がって行きます.スペースシャトルのように帰還可能な「経済的」と呼ばれる乗り物でさえも,再び軌道に上がるには新しく燃料を補給しなければなりません.
 軌道エレベータは違います.例えばチューブの中にリニアモーターカーを走らせたとしましょう.リニアモーターカーを軌道まであげるには電力を必要とします.しかし,その代わりにリニアモーターカーは高く昇るにつれて位置エネルギーを獲得します.リニアモーターはモーターの一種ですから,水力発電のように位置エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電器として機能することもできます.リニアモーターがなければ,軌道から帰還する車両は重力によって加速され,とてつもない速さで落下してしまいますが,リニアモーターがあれば発電することでブレーキをかけてゆっくり帰還することが可能です.(トヨタのハイブリッド車「プリウス」は同様の技術を利用して燃費を向上させています.)このとき,行きに使った電気的エネルギーの大半を回収することが可能です.(大気との摩擦や,車内照明などのサービスに使ってしまった分は,熱となって逃げてしまいますが.)
 以上の比較から,軌道エレベーターの経済性は明らかでしょう.軌道上では太陽電池による発電が常時可能です.水素などの貴重な燃料を消費し,大気汚染物質をばらまく必要はまったくありません.
 また,交通機関として見た場合にも経済性が見込めます.墜落しませんし,燃料を積んでないので安全です.万一,途中で電力の供給が停止しても,チューブを伝って降りてくることができます.しかも電車と同様の大量輸送が可能です.ロケットのように何Gもの加速度を受ける必要はありませんから,普通にエレベーターに乗れる人ならば誰でも軌道上へ上がることができます.むしろ,静止軌道上では自由落下状態(いわゆる「無重力状態」のことですが,重力は働いていますので正確にはこう呼びます.)が実現していますから,体が弱くなって地上では生活できない人も暮らすことができると考えられます.(自由落下状態で暮らすための訓練は必要でしょうが.)観光や医療というサービス産業に宇宙を解放するという経済性が見込めます.当然,これまでにスペースシャトルの実験などの売り文句に使われていた,「自由落下状態における質の良い半導体結晶」など,大量の工業材料と製品を安価に輸送することも可能です.これらは軌道エレベータの経済的価値を示す一例に過ぎません.皆さんも,軌道エレベータで何が可能になるか是非想像してみてください.


3 軌道エレベータ建造の難点

 さて,夢のようにすばらしい軌道エレベータですが,現時点ではやはり夢であるというお話をしましょう.
 軌道エレベータは一種の静止衛星であり,これにかかる重力と遠心力が釣り合っていることはすでに述べました.しかし,これはあくまでも全体として見た場合であり,静止軌道より下側の部分は重力によって下向きに引っ張られていますし,上側では遠心力が勝つので地球から離れる方向に引っ張られています.従って,軌道エレベータは上下に引っ張られており,張力は静止軌道上で最大になります.その大きさ,Ftは,例えば静止軌道以下の部分にかかる遠心力と重力の差の積分値に等しく,



となります.従って,単位断面積(1 mm2)当たりの引っ張り力は,



です.ちなみに,「kgf」は「kg重」のことです.数字が大きいので引っ張り強度の大きい材料を使う必要があることはすぐにわかると思いますが,さて,どれくらい強くないといけないのでしょうか?試みに,ステンレス鋼の密度,ρ= 7.90 g cm-3 を代入してみると,Ft / s = 3.90×104 kgf mm-2となります.言い換えると,1 mm2 当たり39 t の重さがかかるということです.ところが,ステンレス鋼の引っ張り強度は105 kgf mm-2しかありませんから,とてもではありませんが,軌道エレベータの材料には使えません.上記の単純な計算を信じるならば,私たちはステンレス鋼と同じ密度ならば 400倍も強い材料を探す必要があるわけです.



 ここで,「テーパー」という言葉が出てきます.これは「先細の形」を意味します.つまり,ここでは軌道エレベータの太さを静止軌道から離れるほど細くするということです.こうすると軌道エレベータの両端が細くなるので,軌道エレベータを引き延ばそうとする力が小さくなる上,張力が最大になる静止軌道上で断面積が最大になるので,断面積が一定の場合に比べて張力を小さくすることができます.
 例えば,チューブの厚さを一定に保って,チューブの断面の半径を静止軌道からの距離に対して指数関数的に小さくします.チューブの半径を静止軌道では1000 m,地表で10 m,チューブの厚さを1 mとすると,静止軌道からr mの距離でのチューブの断面積sは次式で表されます.



ちなみに,静止軌道ではr = r0 = 0なので,s = s0 = 1999π[m2] です.このsを用いて先ほどのFtを修正してやると,静止軌道上での張力は,



となり,断面積一定の場合の半分以下に軽減されることがわかります.思い切って,静止軌道上でチューブの半径を2000 mにするとFt/s0 = 674ρ [kgf mm-2] になります.この程度の張力ならば現存する物質でも耐えることができます.それは,SiCウイスカーで代表されるウイスカーという物質です.SiCはシリコンと炭素の化合物で,シリコンカーバイドと呼ばれています.ウイスカー(whisker)とは「猫のひげ」に語源を持つ学術用語で,「ひげ結晶」という訳があります.SiCウイスカーの密度は 3.18 g cm-3ですから,この材料で軌道エレベータを作ると静止軌道での半径が2000 mの場合,張力は2143 kgf mm-2となります.これはSiCウイスカーの引っ張り強度2142 kgf mm-2と偶然ですが同程度の大きさです.従って,SiCウイスカー程度の強さの物質を材料にすれば軌道エレベータを作れることがわかります.



 しかし,ここに落とし穴があります.冒頭で軌道エレベータは「ただ一つの技術的問題を除き」実現可能だと書きました.この問題とはまさしく,「ウイスカーを何万kmどころか数mの長さにさえ現代の技術では成長させることができない」ということです.ウイスカーは細長い一次元的な材料ですから,ひげの途中のどこかに欠陥があったら,ひげの両端を引っ張ったときの強度を低くしてしまいます.このような欠陥のない最長のウイスカーは現在でもせいぜい数 cm(これでも「長大」だと言われています.)だそうです.
 近年,カーボンナノチューブという素材が開発されました.これは炭素原子でできた直径がナノメートル(10-9 m)単位のチューブ状の分子です.カーボンナノチューブは直径はナノサイズですが,長さは数mmに達するものが合成されています.この素材の優れたところは,引っ張り強度が5000 kgf mm-2とウイスカーの倍程度かつ,密度が約1.4 g cm-3と半分以下であることです.自重を支える強度という点では,カーボンナノチューブはウイスカーよりも4倍以上適しているということができます.とはいえ,ウイスカーもカーボンナノチューブも軌道エレベータの材料の最有力候補ですが,十分な長さの材料がまだ得られていないのです.


4 あとがき

 軌道エレベータはすばらしい乗り物ですが,その実現の難点は,かいつまんで言えば「強力な材料が必要だが,それに適した材料が今のところない.」ということです.(コストという別の問題もあるにはありますが.)
 私が軌道エレベータのことを初めて知ったのは,学部の3年生のときにA.C.クラークの「楽園の泉」を読んだときですから1988年だったと思います.当時,東京都立大学の理学部化学科で開講していた「化学史」の夏休みのレポートとして,講師の道家先生が出されたテーマは「何でもいいから化学に関係したモノについて調べて書きなさい.」というものでした.学部時代の夏休みはアルバイトで毎年忙しかったのでレポートをやる気がしませんでした.そこで,なるべく下調べをしないで書けるテーマはないかと悩んだ末にSF小説が好きな私は,「そうだSFに出てくるモノの解説をしてごまかそう.」と考えました.ちょうどそのとき「楽園の泉」読んだばかりでしたし,軌道エレベータを作る鍵になるウイスカーの存在を知っていましたから,軌道エレベータとウイスカーの話を数ベージのレポートにまとめてごまかしたことを覚えています.(他の人はコンタクトレンズとか薬品のことを調べたりしていたようです.)
 4年生になるときに卒業研究の指導をしてもらう研究室を選ぶわけですが,初めは特にどこの研究室に行きたいという希望もありませんでした.「楽園の泉」の中では長大なウイスカーが実用化されおり,「最新の固体物理学の成果」だというセリフが出てきたものですから,「よし,固体の研究をしている研究室に行こう.」と,またしても安直に考えて池本研に行くことにしました.(化学系の研究室では分子レベルの物質を扱うところが多くて,固体物性を研究しているところは比較的少ないのです.)卒研生の時に与えられたテーマが「有機伝導体の熱電能を測定する」というもので,以後研究室の居心地がよくて,有機伝導体の研究も気に入ってしまって現在に至るわけですから,「楽園の泉」は私の人生を決めた本だと言うこともできるでしょう.
 残念ながら私が軌道エレベータの建築に関わる機会に恵まれることはないでしょう.現在,そして近い将来も地球の重力井戸を飛び出すための乗り物は推進エンジンを使ったロケットやスペースシャトルが中心で,どの国も本気で軌道エレベータの建築をする気配はありません.また,軌道エレベータは一国や一企業が建築し独占して良い類のものではなく,人類が宇宙へ飛び出すための共通の資産となるべきものですから,国際的な共同のプロジェクトとして建築されなければなりません.私が生きているうち(せいぜい2060年まで?)にそのような状況が生まれるかどうか非常に疑問です.しかし,人類が宇宙に大量に飛び出す時代が必ずやってきます.そのときまでに,「どこでもドア」や「反重力推進システム」等の既存の物理を越える原理に基礎を置く発明がなされるのでなければ,軌道エレベータこそが本格的な宇宙開発を可能にするのです.
 私がホームページで軌道エレベータの紹介をするのは単なる趣味の域を越えないかもしれませんが,軌道エレベータが実現可能であることを広く皆さんに知っていただき,軌道エレベータを作ろうという社会的な気運が生まれることを期待しているのも事実です.このページを読んで,軌道エレベータを建造する上での上記の問題点を理解し,それに挑戦してくれる若い人が出てくれれば非常に嬉しいですが,そこまで行かなくても,軌道エレベータを作ろうという試みが具体性を帯びてきたときに暖かく応援してくれる人が増えてくれれば良いと願っています.
 国際的な名誉,種々の経済的利益,若い世代に与える目標,といった意味で,日本はオリンピックや万博程度のイベントの開催では満足しないほど大きく成長してしまったと私は考えています.日本は東京オリンピックで得たほどの満足感をそれ以降のオリンピックで得ることはありませんでしたし,もし今後オリンピックの招致に成功したとしても同様でしょう.
 私は将来の日本が世界の歴史において重要な役割を果たしたと自ら満足するためには,軌道エレベータ建造のリーダーシップをとるくらいのことをしないといけないと考えています.日本はすでにリニアモーターカーの技術を持っています.また,材料開発においても世界のトップレベルの技術を持っています.静止衛星を打ち上げる能力もあります.自力の有人宇宙飛行はまだですが,もう一息だと思います.長大な軌道エレベータ建造のためには自動化システムも必需ですから,お家芸のロボット技術も大いに役立つと思います.ここまでできる国に軌道エレベータの建造を推進する能力がないとはとても思えないのですが,皆さんはどうお考えになるでしょうか?


5 参考文献

5.1 SFにおける登場例

 軌道エレベータを作ることの意義とそのものの面白さを知るには解説書よりも次の小説を先ず読んでみるのをお勧めします.

[1] 「楽園の泉」,アーサー・C・クラーク著,山高 昭訳,早川書房 (1987).
[2] 「星ぼしに架ける橋」,チャールズ・シェフィールド著,山高 昭訳,早川書房 (1982).
[3] 「レッド・マーズ」,キム・スタンリー・ロビンスン著,大島 豊訳,東京創元社 (1998).

 [1] はハードSFの巨匠,クラークの後期の代表作で,近未来を描いた長編小説です.世界的な橋の工学者/建築家である主人公が,幾多の困難を克服して「宇宙に架ける最大の橋」を建造する過程を迫真の説得力で描いた傑作です.私が現在の研究に進んだきっかけとなった作品でもあります.ヒューゴー賞とネビュラ賞というSF界では代表的な賞を獲得しています.
 [2] の著者は研究者とSF作家の両方で知られています.物語は軌道エレベータの建造と共に謎解きにも力点が置かれたミステリータッチになっています.この小説の主人公も近未来の橋の工学者で,原作の発表も[1]と同時期という偶然が重なったため,クラークはシェフィールドのために序文を提供しています.
 [3] は最近邦訳が出版されたばかりです.火星移民を主題とした近未来小説で,火星の軌道エレベータが最後の方に登場し,火星における経済的必要性も説明されます.(物語の主題ではありませんが.)軌道エレベータの地表側の町を「シェフィールド」,反対側のおもりとなる小惑星を「クラーク」と名付けて,[1],[2] へのオマージュとしています.軌道エレベータが崩壊したときの描写はなかなか面白いですが,軌道エレベータを地球で作るときにブレーキがかかりそうですね.
 [1-3] いずれも文庫本です.勧めておいて何ですが [2] は何年も前から在庫切れで再販未定の状態です.私は偶然古本屋で見つけることができましたが,それ以後どこの古本屋でも見かけていません.他のシェフィールドの著作と共に早川書房が復刊を行ってくれることを望みます.[3] は分厚いのが上・下巻になっているので,SFが好きな人にしかお勧めしません.
 軌道エレベータの崩壊で思い出しましたが,一昔前の「オーガス」とかいうタイトルのSFアニメの再放送第一回を偶然見ました.物語の始まりがいきなり,主人公が敵国の管理する軌道エレベータを破壊する話だったのでちょっと驚きました.つまり,お茶の間に「軌道エレベータ」という言葉が流れたことがあるってことですね.またコミックでは,

「銃夢(ガンム)」,木城ゆきと著,集英社 (1991-1995)

に重要な舞台として登場します.このSFアクション系コミックには熱烈なファンが多いようです.

5.2 解説書

[4] 「ポピュラーサイエンス 軌道エレベータ -宇宙へ架ける橋-」,石原藤夫・金子隆一 共著,裳華房 (1997).
[5] 「ポピュラーサイエンス SFを化学する」,山崎 昶著,裳華房 (1992).
[6] 「SFはどこまで実現するか」,ロバート・L・フォワード著,久志本克己訳,講談社 (1989).

 軌道エレベータのアイデアは昔からいろいろな人が独立にひらめいていたようで,その歴史的なことや上記の私のものよりも詳しい解説が [4-6] に載っています.探せば他にもあるでしょう.
 [4] はそのものずばりの決定版です.
 [5] は章立てでSFの長編小説を一本ずつ科学的に解説した興味深い本です.第2章で上記 [1]「楽園の泉」を扱っています.
 [6] の著者は物理の研究者が本業ですがハードSFも書いている他,多くのSF作家にアイデアを提供してきた人物としても有名です.[5] と同様にSF小説を題材にしていますが,章立ては通信技術や恒星間飛行などの技術的な分類に基づいており,第3章が「宇宙にかかるケーブルカー」となっています.軌道エレベータの他のバリエーションについても解説しています.

5.3 ウイスカーについて

[7] 「新素材ハンドブック」,新素材ハンドブック編集委員会編,丸善 (1988).

 固体物理や材料科学の本では簡単な記述をよく見かけますが,いろいろな種類のウイスカーの物性や製法がまとまって載っているものとして,[7] を参考にしました.


6 読売新聞記事

 軌道エレベータ(宇宙エレベータ)が読売新聞で紹介されました.これを機に軌道エレベータへの理解や関心が一層高まることを願っています.

 読売新聞2006年1月21付 夕刊 7頁 2版


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