趣味で読んだ本について気ままに書きます.【おすすめクラシック】の冒頭にも書きましたが,これも代償行動のような気がします.
小学校2年生の頃から,学校の図書室にあった子供向けのSFを読み始めました.低学年向けのシリーズにあった,エドモンド・ハミルトンの「キャプテン・フューチャー」やR.A.ハインラインの作品に触れ,高学年向けでE.E.スミスの「レンズマン」を知りました.学校のSFを読み尽くした後は,市立図書館に通ってやはり子供向けのSFを読みあさりました.図書館にない別のシリーズを買ってもらったりもしました.
中学校に入るといわゆる子供向けは読み尽くしてしまいました.ちょうど眉村卓の「ねらわれた学園」や筒井康隆の「時をかける少女」が映画化された頃で,日本人のSF作家の文庫本に目がとまりました.しばらくは,角川文庫のSFを読みふけりました.
最寄り駅の大きい書店に通っていると,自然と早川文庫と創元推理文庫のコーナーに目がとまりました.すると,懐かしの「キャプテン・フューチャー」が未読のシリーズと共に揃っているではありませんか!!! 狂喜してしてこれらを読みあさりました.幸せでした.
早川文庫の「キャプテン・フューチャー」は20冊しかないので,ほどなく読み終わりました.本の後ろの解説を読むと,スペース・オペラ(略してスペオペ)というジャンルの本だったことがわかりました.そして,小学生の時に読んだ「レンズマン」が,スペオペの金字塔E.E.スミスの「レンズマン」シリーズの1冊であることを知り,創元推理文庫に移動しました.
「レンズマン」は中学生でも読めた気がします.自動的にスミスの「スカイラーク」シリーズも読みました.他にもアシモフの「銀河帝国の興亡」なんかにも目がとまりました.J.P.ホーガンの「星を継ぐもの」も刊行直後に読んだ気がしますが,当時の私には難しくて手こずった覚えがあります.
高校生時代は,連続刊行が始まっていたE.C.タブの「デュマレスト・サーガ」にはまっていました.心の底から面白いと思いました.読解力も向上したので「星を継ぐもの」を再読してようやく面白さがわかり,続編とホーガンの他の作品も読み始めました.ハードSFに開眼したのもこの頃です.自動的にA.C.クラークに目が行きました.そこで早川文庫にもまた手を出し始めました.
そうこうするうちに大学生になりました.大学生になると,通学時間が延び,財力も高校生とは段違いですから,それはそれは読みまくりました.大学生協ではなんと本が10%引きですから大感激です.新刊をチェックしては,生協のカウンターの注文伝票に書き込み,本が届いたどうかを店頭の掲示で確認する日々が続きました.幸せでした.
当時SFの古典的な三大巨匠として有名だったのは,クラーク,ハインライン,アシモフです.これらの作家の本は,早川も創元も共に充実していましたので,そそられたタイトルの本から読んでいきました.ハードSFの巨匠クラークは偉大だなと思いました.天才ハインラインのバイタリティーあふれる登場人物には強く惹かれました.クラシック音楽の古典派と対比すると,クラークはベートーヴェン,ハインラインはモーツァルトといった感じです.ハイドンは比較的聴くことが少ないのですが,アシモフの明朗で隙のない作風はハイドンに通じるものがあると思います.
こうして大人になっても子供の頃と変わらず,大学生協で文庫本を買っては読み買っては読み,の生活を続けた結果,何冊読んだか数えるのも面倒になるくらい読んでとても満足していたのですが,最近(2017年)ペースが急落しました.こんなことは人生で初めてです.
理由の一つは,受け持った講義の関係で数学の勉強をやり直したら,そちらの方が面白くなってしまったこと.もう一つは,どうも作家と自分の年齢が近づいたり逆転したりして,人生経験の差がわずかになったためのようです.これには研究者としてサイエンスに携わっていることも関係しています.
さらに,これらにも増して思うのは,現実の世界がかつてのSFに近づいたり追い越したりして,センス・オブ・ワンダーを感じにくくなったのではないかということです.
例えば,小説ではありませんが,TVドラマや映画の「スター・トレック」シリーズには,現在のスマートフォンやタブレットに似た端末が出てきます.1970–80年代には十分未来的だったのですが,もはや日常的に新製品が競い合う時代です.インターネットは20世紀の視点からしたら驚異のテクノロジーだったはずですが,今や買い物に使ったり,犯罪やテロ行為にも利用されています.
バイオテクノロジーも商業化されて久しく,民間宇宙旅行もすぐそこに来ています.直接観測ではありませんが,系外惑星もたくさん見つかっています.そして,このような例の最たるものはロボットと人工知能(AI)です.もちろん意識を持ったロボットはまだできていませんが,クラウドのAIと会話することは特別なことでも何でもありません.
また,科学やテクノロジーの限界もよく理解されるようになりました.光速を超えた宇宙旅行は無理そうです.タイムマシンで大昔に戻るのも不可能です.そもそも,過去なんて存在しているのでしょうか? 地球外生命体・知性体はどこかにいると信じていますが,膨大な恒星間・銀河間距離が壁となり,見つけ出すのはかなり難しそうです.
歳をとったのかなと思うこの頃です.とはいえ,SFに限らず小説はフィクションですから,通常小説に近づいた形でSF小説も生き残ることでしょう.SFミステリーやSFミリタリー分野は活発です.人間性を問うジャンルや,近未来社会をいかにリアルに描くかというアプローチは不変です.「この宇宙」には物理法則の限界がありますが,それを超えた法則を許す並行宇宙の存在は否定されていません.
ということで,ちょっとご大層ですが,私の愛したSFの今後の方向性を探る意味も込めて,そして,若くて好奇心にあふれた人に過去の良品を紹介するために,SFの代表的なジャンルごとにおすすめの作品をリストアップしたいと思います.
最後になりますが,SF以外にも面白い本はたくさんあります.私もSF小説だけを読んで生きてきたわけではありません.多少分野が偏っていますが,他の分野の印象に残った書籍も紹介したいと思います.これらがささやかながら,若者の読書離れを防ぐ一助になれば幸いです.
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